• mmのひとりごと

    むかしむかし小説を書いていたことがあります。

    商業ベースには到底乗せられず、中途半端なまま書かなくなっていました。

    ちょうど今この仕事をしていて思うことがあります。

    わたしたちの生活とともにあるはずのさまざまな法律や制度は非日常で、

    どこか遠くのできごとのように感じている人が多いのではないか。

    そうではなく、すぐ隣のことであると感じられる方法のひとつとして

    昔取った杵柄、とまでは言えませんが、物語に注釈を添えた形でお伝えします。

    (スマートフォンでご覧の方は注釈にたどり着くまでスクロールしてください)

     

     

    主人公は中小企業総務部勤務、仕事のやる気ゼロ以下のみどり。
    日々退職することばかりを考えている。
    ある日みどりは見知らぬ美しい人に触れた瞬間に意識をなくす。
    意識が戻った先はおそらく知らない世界。
    そこでの労働問題社会保険問題に否応なく巻き込まれる。
    総務部の経験を活かして活躍…できるのか。
    タイトルは
    『そのままの水を』
    はじめます。

     

    broken image

    この文庫本は当事務所代表が10年以上も前に「山田一休」として上梓したものです。

    心に闇を抱えた主人公たちがバーテンドレス雫の作ったカクテルを飲むと、どこか別の場所に飛ばされ、そこでの経験から新たな着想を得て、自我を取り戻し、再生していく物語です。

    こちらでもでも雫さんの力を借ります。

  • 『そのままの水を』

     

    1、

     

    退職ばかりを考えている。

     

    淀んだ空気が充満する狭いオフィス、カタカタと不協和音を立てるキーボード、

    上司が誰かのミスをねっとりと詰めているのが目の端に見切る。

     

    辞めてやる辞めてやる、退職届などそんなものも書きたくない、

    心がザラザラする。

     

    …プッププ…プッププ…。

     

    ほら、内線を取るのは誰だ。誰だ。

    「ちょっと総務~、内線取ってくださいよ~」
    オフィスの端から困り顔が叫んでいる。

     

    私か。私なのか。だからだよ。

     

    「はい、総務部です、は? 後藤さんですか?」声がいら立つ。
    ほら私じゃないじゃない、隣のデスクの後藤に無言で受話器を渡す。
     

    「今私、忙しいのですが」後藤のまつ毛エクステが私を見る。

    『忙しくない人』が内線ぐらいさっさと取れと偽物のまつ毛がわさわさと揺れる。

     

    私はそっと席を立った。

     

    「昼休憩行ってきます」誰に言うでもなく。後藤のエセまつ毛がまた揺れたか。
     

     

    オフィスビルを出てやっと息ができた。

     

    オフィスビルとはいえ住宅街にある古いちっぽけなビルだ。

    緑色のこっけいな窓枠がもはやかわいい。

     

    いつもの公園。いつものベンチに座る、いつものへんな像の前だ。

     

    上半身裸の男性が右手に工具のようなものを掴みうつむき加減に微笑んでいる。
    裸で工具で微笑み…? アートはよくわからない。

     

    スマホの画面を凝視した。ウインクしているカモメのアイコンに触れる。
     
    退職代行サービス! すぐヤメカモメ』

     

    私をにこやかに出迎える。
    今最強のお守りだ。

    2、につづく

    2、

     

    アプリを起動。ぱっと陽気な『ヤメカモメ!』くんが現れた。
    退職代行サービス『すぐヤメカモメ!』。

     

    少し情報を入力するだけで、もう私は自由だ。

     

    誰にも会わず何にも聞かれず、残った有休を全て消化し消える。

     

    送信ボタン、まできて又、今回も指が止まる。

     

    明日消えたら、あの仕事はどうなる? いやいや誰かがやるだろう。
    ちょっと面白い「ES調査」の統計、まだ途中だ。 いやいや誰でもできるから。

     

    ふるふると首を振る。
    アプリを閉じた。

     

    マイ水筒の水を喉に流し込む。

    像を見上げる。おかしい? 私。

     

    石造りの像は優しい顔をしているが、瞳が描かれていないためかどこかうつろで虚無だ。そして、疲れているように見える。

     

    虚無で疲れているのはあなたでは?

    耳元で声がしてぎょっとした。

     

    「え?」

     

    思わず立ち上がった。
    膝に乗せた作業服が落ちた。

     

    黒い影が優雅に揺れる。

    「大丈夫?」

    ハスキーな声とともに花の匂いがした。
    「あ、はははい」

     

    隣のベンチに女の人がいた。

     

     

    黒い服、長い髪、そのせいか露出している皮膚はま白だ。その人は片手に大きなユリの束を持ち、器用に作業服を拾ってくれた。胸ポケットの刺繍に視線を走らせつつ。

     

    『ARATA伸線(株)』紺の作業服に社名の刺繍は黄色だ。

     

    「あありがとうございます」かっこ悪いものを見せてしまった。

     

    奪うように受け取る。つと手がその人の手と触れた。

     

    なんてきれいな人だろう。完璧なアーモンド形の目、ちらりと覗く耳は内側から真珠のような光沢を放っている。

     

    産業戦士っていうみたいよ」

     

    「は?」 美しい人、今なんと?

     

    「さん…?」
    目の前が真っ暗になった

    3、につづく

    3 、

     

    何? 貧血?

     

    スマホで時間を確認した。

     

    ないわあもう、充電切れて死んでる

     

    作業着に腕を通すと、ふいに鼻にかすかな違和感を覚えた。像を見た。

     

    あれ?

     

    やけに白く新しく修復されている箇所が見て取れた。手に持つは工具と小さいノートに変わっている。私は少し首を傾げた。

     

     

    帰社すると、デスクに貼られた派手なピンクの付箋に出迎えられた。

    後藤からだ。当の本人はいない。

     

    『営業林 14~ 産休入り説明

     

    ん? 営業の林くん? 産休?

     

    「お疲れ様です…」

     

     

    事務所入り口からおずおずと顔をのぞかせる職員。
    ああ、同期の林か。

     

    ええええ

     

    息が止まった。

     

    『営業の林くん』が恥ずかしそうに自身の少しふっくらしたお腹に手をやる。

     

    「もうスラックス、ウエストゴム」

     

    そう、『営業の林』は男性社員だ、私が知る限り。

     

    わわわわわけがわからん…

     

    周囲を不安げに見渡す。落ち着かない私に林はくいと首をひねらせた。

     

    「ミーティングルーム先に行くぞ」

     

    ぶっきらぼうは確かにいつもの林だ。

     

    斜め前の係長がにがにがしく口をへの字に曲げた。

     

    「男が妊娠てよ、考えられんよ俺らの時代」

     

    それはマタハラだと誰かがやけに真摯な顔で諫めた。

     

     

    やばいですよと付け加え。

     

     

    私は完全パニック。デスクのPCで急いで検索する、グーさまお願い!

     

    『男性 妊娠』

    出てくる出てくる。

     

    男性の妊娠に関するワードが際限なくあふれ出る。

     

     

    画像も動画も。助けて厚労省!

     

     

    2022年4月改正育児介護休業法・・・目が留まる。

     

    これは去年春からの改正された育児介護休業法だ。うちの会社も対応に追われた。4月と10月に大きな改正があった。

     

    いやこれは この内容は、

     

     

    『男性の妊娠出産の促進等に関する法律』

     

    ~先の通常国家において衆参両院共に全会一致で可決成立した「男性の妊娠出産の促進等に関する法律は去る4月1日に令和3年法律第70号として交付され本規定は二年以内に施行されることが決定された~労働基準法が規定する妊産婦等から性別を表す文言が抹消された~。
     

     

    4、につづく

    4、

     

    ミーティングルームへ向かう。足が重い。

     

    「遅ぉ、谷元」

     

    林はペットボトルのキャップを開けながらあくびを噛み殺した。

     

    「ずっと眠い…」

     

    私は曖昧に笑った。林は唯一残っている同期入社の社員だ。体の線は細く、色白でいかにも頼りなげな印象の外見とは裏腹に、何事にも驚くほど行動的で思いがけないトラブルにも適切に処理できる、まあ頼ってもいい男だ。

     

    「なんだ、おまえ」

     

    え?

     

    「相っ変わらずのぼ~っ。大丈夫か?」

     

    大丈夫か聞きたいのは私です。

     

    「これ」

     

    ぱそりとテーブルに置かれたペパーミントグリーン色の小ぶりのノート。

     

    「やっともらえたぞ、必要なんだろ、総務」

     

    『おやこ手帳』

     

    ……。

     

    おずおずと手を伸ばした。会社では職員が妊娠出産に関する申し出をするときは証明書類として母子手帳の写しの提出を求めている。そう、今手にあるこういう手帳だ。

     

    『産む人:林 健吾』

     

    うむひとはやしけんご…。

     

    言葉にしていた。

     

    林がきゅっと自身のこぶしを握った。営業職とはいえ伸線産業の職員である。サンプルは時に重く、工場に立つときもある、細いがすじばった男のこぶしだ。

     

    「子宮外妊娠の腹腔を広げる治療は続いてて、正直辛いけどさあ、赤ちゃんもがんばってんだよ」

     

    にこり。母の顔。いや父か。

     

    「谷元、どうするの?」

     

    は?

     

    「おまえ、今年度のMBOどうしたっけ? しかも給与テーブルはレベル5だろ? 産むかスキル上げるかしなきゃ懲戒待ってるぞ」

    5、につづく

    5、

    産むかスキルか、先は懲戒

     

    やるわと林がペットボトルを一本差し出した。

     

    林が飲んでいたものと同じラベル。

    機能性飲料ミネラルウォーター、葉酸・ビタミンB・亜鉛・鉄、そして、知らない成分とMとWが重なり合ったロゴ。じっと見つめた。

     

    どさり、隣から風圧。

     

    「つかれたあ…」

     

    後藤が首をこきこき回した。

     

    それから、両手を天井に突き上げた

     

    「受かりましたっ! 簿記論! 科目合格!」

     

    事務所内に軽く緊張感が走った。

    まばらな拍手が淀んだ空気をかき回す。羨望と諦めにも近い憎悪を隠して微笑む目は笑っていない。

    一人除いて。

     

    「おめでとう!」

     

    事務方トップが握手を求めた。

     

    「君のテーブルが上がるの確定。会社もこれで国の特定雇用率に近づけるよ」

     

    私はイントラネットの就業規則を開けた。

     

    まず、本則、それから給与規定にほかにもほかにも…。

     

    ぐっと喉がつまる。何か大きなかたまりが喉を突き上げる。

     

    口元をおさえる手が震えている。

     

    規定の巻末の改定履歴、どれもこれも2022年10月で改定されている。

     

    就業規則本則「女性労働者」という文言が「労働者」に差し替えられている。

     

    例えば、第5章第25条 (産前産後の休業)6週間(多胎妊娠の場合は14週間以内に出産予定の労働者から請求があったときは、休業させる。第2項 産後8週間を経過していない労働者は、就業させない。第3項 前項の規定にかかわらず、産後6週間を経過した労働者から請求があった場合は、その者について医師が支障ないと認めた業務に就かせることがある。

     

     

    そして、

     

    なに? 新設?
    第29条(不妊治療休暇)労働者が不妊治療のための休暇を請求したときは、年10日を限度に休暇を与える。第2項 労働者が不妊治療のための休業を請求したときは、休業開始日の属する事業年度を含む引き続く5事業年度の期間において、最長1年間を限度に休養することができる。

     

     

    追記?

     

    第68条(懲戒の事由)労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、譴責、減給または出勤停止とする。⑦ 20歳から40歳の生産年齢に属する労働者が在職中に一度も妊娠出産をしないとき。なお、2026年9月までは出産に至らずとも、妊娠をした場合は当該懲戒にはあたらない。

     

    経過措置がある…、よほど恐ろしい。

     

     

     

     

     

     


     

     

    6、につづく

     

    6、

     

    喉がひりひりする。

     

    鞄の水筒を探した。

     

    スマホに触れる。電源がついていた。

     

    復活してる、画面のアイコンが輝く。

     

    『体外受精サービス こうのとり』

     

    赤ちゃんを運ぶこうのとりが笑っている。

     

     

    カモメは、カモメは消えていた。

     

     

    ぶるぶると震える足、ぐにゃりと視界がゆがむ。

     

    トイレに駆け込んだ。洗面台に手をつき肩で息をする。

     

    鏡に映る自分の顔が誰か他人のようだ。

     

    カチャリ

     

    密やかな音を立てて個室のドアが開いた。人影がそっと現れる。

     

    鏡越しに目が合った。

     

     

    「…、総務の…」

     

    確か開発事業部の事務方だ。飯田さん、だっけ。

     

    「ごめんなさい…」飯田のやや丸い肩が揺れる。

     

     

    「わたし、嘘をついていました。妊娠していなかったです。すみません」

     

    涙が一筋二筋。飯田は涙をぬぐうことなく、手洗いの水を細く流し続けた。

     

    飯田の話を聞く鏡の中の私は瞬きもせず、口が半開きになっている。

     

    医療技術の進歩で男性の妊娠が可能となっている、この世界。

     

    体外受精卵を腹腔内に着床させ、胎児を育てることに成功し、もはや子宮は不必要となったことを受け、この国は男性の妊娠出産を推進することで、少子化を打開しようとしている。

     

    法律は急ぎ制定され、一定規模の企業には男性の妊娠出産に関する制度の措置を罰則付きで義務付けた。

     

    妊娠出産が不可能な場合はスキルアップをすることで職務を拡大あるいは拡充し会社に貢献できなければ、懲戒処分相当であると決断する企業が現れている。

     

    そう、ここのように。
     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    7、につづく

     

    7、

     

     

    私はぼんやりと法に反しない就業規則は有効であることを思い出した。

     

    「でも」

     

    飯田の声に張りが出た。

     

    「でも」

     

    でも?

     

    「行く川の水は絶えずして…」

     

    え?

     

    「私が妊娠してないから、旦那にしてもらうわ」

     

    すっきりとした笑顔。しかも元の水にあらずと続けた。

     

    「女性が妊娠出産育児をするのが当然て」

     

    蛇口のハンドルをぐっと倒した。

     

    勢いよく水が放出された。

     

    洗面ボウルにほとばしる水は飯田の代弁者か。

     

    私は飯田が去年まで育児時短制度を利用していたことを思い出した。

     

    「私、来年の社内コンペ、絶対取るわ。もうキャリアの分断を気にしなくていい。産休育休時短を取って、周りに迷惑かけてすみませんすみませんって謝ってばかりなのは女だけなんて、おかしいでしょう」

     

    飯田は私に同意を求めた。

     

     

    「働け産め育てろ看取れ、男が」

     

     

    デスクに戻ったが、私の頭は飯田の言葉を反芻させることを止めない。

     

    あ。

     

    PCをあたふたと再起動する。

     

    共有ドライブ、ESフォルダ内、2023年度、項目、「労働環境への満足度」「キャリアプランに関する満足度」「評価制度に関する満足度」、集計、クロス集計、順に探す。

     

     

    画面をスクロールする手が止まらない。

     

    うなじの産毛がちりちりと逆立つようだ。

     

    2020年度と比較すると、2023年度は労働環境・キャリアプラン・評価制度と三項目すべて女性社員の満足度が高まり、男性社員の満足度が低くなっている。

     

    自由記述形式の、ある一文が私に語りかけた。

     

     

    『男性の妊娠出産制度の導入でキャリアップを諦めなくてもよくなりました』

     

     

    そこには何人もの飯田がいた。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    8、につづく

     

    8、

     

    喉のひりひりが収まらない。

     

    ビル1階の自販機に向かうが、エレベーターが待てない。

     

    非常階段を走り降りた。

     

    走らずにはいられなかった。

     

    何かの衝動に私の背中が押される。

     

     

    ああっ! ローファーが片足脱げ…っ!

     

     

    階段を踏み外した感覚とともに目の前が真っ暗になった。

     

    痛みは感じずただただ暗い。目は開いているのに暗い。

     

    「おい」遠くで声がする。

     

    「おい、靴」

     

    私は何とか立ち上がる。

     

    林だ。かかがんで、私にローファーを履かせてくれた。

     

    スラックスのベルトが見えた。それはしっかりと林の細い腰に巻き付いていた。

     

    「けがないか?」

     

    「うん、何とか」

     

    「なんだ? なんだよ」

     

    私は林の体を凝視していたらしい。

     

    「お腹、お腹ぺったんこ」

     

    「ああ、太れない体質だからな。お、スマホもぶちまけてるぞ」

     

    あ、どうも。

     

    ……。カモメが戻っていた…。

     

     

    「ね、林、ここどこ?」

     

    林が怪訝な顔をする。

     

    私はどこで何をしていたのか。

     

    「打ちどころ悪かったか? コーヒー買うけど、行く?」

     

    きょろきょろと落ち着かない私を見て、本当にけがはないかと林は心配している。

     

    ふと、あの公園で嗅いだ花の匂いを感じた。

     

     

    がこん

     

    林の缶コーヒーが慣れた音を立てる。

     

    『カフェイン量業界MAX ブラックを超えたブラック』

     

    カフェイン最高だよな、林がにんまりする。

     

    「おまえは? 同じの?」

     

    「ううん、あ、水で普通の」

     

    普通の水をください。

     

    「そうだ、嫁、妊娠した。今すぐ総務に出す書類ある?」

     

    私は少し呆けた。

     

    手にした水を見る。

     

    「すぐは、ない、けど…」

     

    あの公園のあの像が持っていたものは何だったか、あの像、産業戦士って?

     

    「…えっと、けど、絶対」

     

    絶対、林にはぜひ男性の育児休暇の取得を促そう。時短も。

     

    そうだ、全部ちゃんと説明できるようにすべきでは、私。

     

    ゆっくりとデスクに向かった。

     

    イントラネットで社内コンペを調べる。

     

    「出るの?」

     

    後藤が身を乗り出して私のディスプレイを覗く。

     

    「うちも出るつもり! お互いがんばろ」

     

    まつ毛が美しく揺れるのが見えた。

     

     

    プッププ…。

     

    内線だ。

     

    「はい、総務部谷元です!」

     

    ワンコールで出た。

     

     

     

     

     

     

    9、

     

    店内はやはり薄暗い。

     

     

    天井のスポットライトが生けたカサブランカの影を濃く壁に映す。

     

    かつかつかつ…。

     

    雫が美しい手さばきで氷を割る。アーモンド型の目が時折宙に留まる。

     

    「今日ね、お墓行ったわ」

     

    「ああ、伸線の」答えた男性はカウンター席の端から雫を見た。

     

    そ。

     

    雫は無表情のままだ。

     

     

     

     

     

     

    おわり

     

    ◆◆mmの注釈◆◆

     

    ◆令和5年9月現在◆

     

    退職

    日本国の最高法規である日本国憲法第18条に奴隷的拘束の禁止が、第22条には職業選択の自由が定めれられています。つまり、労働者は使用者に不当に拘束されることはなく、退職は労働者の自由の意思のもとに成立します。

    また、民法第627条第1項に期間の定めのない労働契約を結んだ場合の退職の自由の定めがあり、労働者が退職の意思表示をしたのち 2週間経過 すれば労働契約は終了します。

     

     

    退職の種類

    三種類あります。ひとつめは自己都合退職(一方的退職)。労働者による一方的な労働契約の解除です。ふたつめは予め定められていた事由による退職です。定年退職や契約期間満了、休職期間満了などです。そして、みっつめは合意退職です。労働者が契約の解除を使用者に申し出て、使用者がそれを承認することで成立、また、使用者が希望退職を募り、労働者がそれに応じた場合も成立します。

     

     

    退職届

    退職の意思表示の方法に法律の定めはありません。口頭でもメールでも、また会社の決まった様式でなくとも法律の上の違反とはなりません。

     

     

    休憩時間

    労働基準法第34条で定められています。使用者は労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を労働時間の途中に与え、自由に利用させなければなりません。休憩は全労働者に一斉に付与することが原則ですが、労使協定を締結する(業種によっては不要)ことで一斉付与は適用除外となります。

     

     

    退職代行サービス

    労働者本人の代わりに職場に退職の意思を伝える業者であり、利用する人が増加しています。

    法律上は、弁護士法第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止に違反する恐れがあります。報酬を得て業務として「法律事務」を行えるのは弁護士のみです。それ以外のものが法律事務を行うと違法です。退職は法律事務にあたります。

    その代行サービスが行う業務をしっかりと見極める能力も労働者には必要です。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    有休

    法律用語では「年次有給休暇」です。労働基準法第39条に定められています。平成31年4月から全企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、付与日数のうち年5日については、使用者が時期を指定して取得させることが義務化されました。パートなど契約期間に定めのある労働者も要件に該当すれば適用となります。違反をした事業所(企業)には罰則が科されます。令和3年7月、愛知県で初めて有給休暇の取得義務不履行として労働基準法違反で書類送検がされています。
    また、同法第6項には計画的付与の定めがあります。たとえば、有給休暇の付与日数が10日の労働者には5日、20日の労働者には15日までを計画的付与の対象とすることができます。(就業規則に規定し労使協定を締結する要件あり)。

    使用者が都合で取得日を決めるのかと違和感を覚える労働者もいるでしょうが、有給休暇の取得促進に有効だとされています。有給休暇のスムーズな取得は、労働者の心身の疲労の回復や生産性の向上につながり、使用者と労働者の双方にメリットがあるという考え方です。

     

     

     

     

    ES調査:

    Enployee(従業員) Satisfactionの頭文字です。

    企業は労働者のモチベーションを上げ、少ない労働時間(時間外残業をしない)で多くの成果を得る、すなわち生産性向上に 注力します。

    労働者が自社の業務、福利厚生、そして人間関係にどれだけ満足しているかを調査します。

    定期的に調査をすることで、労働者個人はもとより、部署や役職ごとのモチベーションや認識の相違など課題を可視化し問題を未然に防止するための解決策を打ち出す可能性を広げます。

     

     

    ◆労働者のモチベーションの話は別の機会でお話したいと考えています◆

     

     

     

     

     

     

    産業戦士:

    産業戦士の像は太平洋戦争の只中、昭和19年ごろに美術家などの手によって製作されました。国家が軍需工場をはじめとする各工場への労働力動員のため、「勤労」「産業戦士」といった考え方を体現することを国民的名誉とし、労働者は戦場で戦う兵士と同様であると位置づけ、戦意高揚を促しました。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    産休入り説明:

    令和4年4月1日から妊娠・出産の申出をした労働者に対し、個別に周知・意向確認の措置が企業規模を問わず義務となりました。出産育児に関する制度や法律の説明を適切な時期に適切な方法で行うこととされています。この適切な方法は①面談(オンライン可)②FAX③電子メール等 とされいて、要はツールは問わないということです。

     

    マタハラ:

    ※実際の法律説明※

    マタニティハラスメントの略。

    女性労働者が、妊娠・出産・育児に関し、妊娠・出産したことや休業などの制度を希望したことや、これらの制度を利用したことなどを理由に、上司や同僚などから嫌がらせを受け、就業環境を害されることをいいます。

    なお、法令や国の指針では、マタニティハラスメント、パタニティハラスメント(男性労働者が育児のために制度利用を希望または利用したことでうける嫌がらせ等で就業環境を害されること)、ケアハラスメント(働きながら介護をしている人が、上記「制度を~害されること」と同じ)の3つをまとめて、『職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント』と呼んでいます。

     

     

    ◆法令の条文、裁判の判決文などの、非常に長くまどろっこしい表現にとまどったことはありませんか? あれは、他の解釈を許さない唯一無二の絶対解釈を万人にさせるためだそうです。

    それを聞くとなるほどなとハラオチしますね◆

     

     

    改正育児介護休業法:

    ※実際の法律説明※

    令和 4年4月、10月、令和5年4月と三段階で施行されました。

    1、制度の個別周知・意向確認(令和4年4月)2、雇用環境整備義務(令和4年10月)3、育児休業取得率の公表(令和5年4月)

    1、は先述のとおり。

    2、雇用環境整備義務は新たに出生時育児休業(産後パパ育休)制度の創設と育児休業の分割取得の制度を整えることです。就業規則の改定など多くの企業が対応に追われました。

    3、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は育児休業の取得状況を年に1回、自社のHPや厚労省運営のWEBサイト『両立支援のひろば』等で公表が義務となりました。今後、労働者の規模要件は1,000人から逓減するでしょう。

     

     

    『男性の妊娠出産の促進等に関する法律』:

    ※フィクションです※

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    同期入社:

    日本型人事システム「新卒一括採用」から「通年採用」に移行する企業がIT関連企業を中心に増えています。通年採用が当たり前になると『同期入社』という概念も無くなるかもしれません。

    人事制度の仕組みも日本型から欧米型への転換が進んでいるといわれています。

    日本企業は能力主義的人事制度であり、個々の労働者が持つ職務遂行能力を基準に人事を実施する「人に職務をつける」制度であり、欧米企業は職務主義的人事制度で、職務の価値を基準に人事を実施する「仕事に人をつける」制度です。前者を『メンバーシップ型』、後者を『ジョブ型』と呼びます。

    日本企業が『ジョブ型』に転換を図る理由はひとつではありませんが、もはやメンバーシップ型雇用が日本社会において機能しなくなったことが大きな原因だと思います。終身雇用や年功序列賃金といったシステムに対応するような、飛躍的経済成長が見込める環境にはないからです。そのため、新たな雇用システムとしてジョブ型雇用が注目されているのです。

     

     

     

     

     

     

     

    MBO:

    「目標管理制度(MBO)」とは、労働者自身に目標を設定させ、それに対する進捗や達成度合いで評価を決める制度で、Management By Objectivesの頭文字です。ドラッガーが提唱した組織マネジメントの概念です。
    目標管理は、「労働者のモチベーション向上」や「評価を下しやすくなる」など、労働者やマネジメント層などにメリットがある方法であるといわれています。個別に何を達成させるのかを明確にし、個人と組織のベクトルを合わせ、最終的に個人の目標と組織の目標をリンクさせることが目的です。    

     

     

     

    給与テーブル 

    給与テーブルとは、賃金や給与を決める基準になる表のことです。 一般労働者から幹部レベルまで等級に振り分け、その等級を基準にして給料を決める仕組みになっています。 等級をどのように決めるのかは会社の考え方が強く反映されます 。

    給与テーブルを労働者に開示するか否かを悩まれる経営者に出会うことがあります。

    そのときは即答で、開示を勧めます。給料テーブルに限らず、給料制度について公開されていると、自身の賃金がどのような基準で決定されているかを知ることで労働者に安心感を与えます。そして、給料制度と評価制度に一貫性があることが最も重要です。評価が給料に反映されること、評価が適切にされていることがわかると、労働者の満足度は高まります。
    その結果の帰趨はエンゲージメントを高め、生産性の向上や離職率によい影響を与えることとなります。

     

     

     

     

     

    懲戒:

    懲戒処分とは、 従業員が職場規律・企業秩序に違反したことに対する制裁として行われる不利益処分 です。就業規則に定めるなどの要件はありますが、懲戒処分の対象となる行為や処分に関しては、法律で具体的に内容が定められていません。では、企業側は就業規則に則ったならば、その裁量で懲戒処分を行えるのかというと、労働契約法第15条で使用者の懲戒権濫用の無効性が定められています。使用者が労働者を懲戒できる場合で、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない懲戒に関しては、権利濫用とみなし無効とするというものです。 

     

    ◆労働基準法と労働契約法、普段耳にするのは「労働基準法」ではないでしょうか。

    実は、就労する上で「労働契約法」はとても身近な法律なのです。

    違いを簡単に説明します。

    労働基準法は、労働条件の最低基準が規定されています。違反した場合には刑事罰が科せられます。そうです、労働基準法は罰則が規定されていて、国が使用者を取り締まるための法律となっているのです。

    一方、労働契約法は労働者と使用者の関係を民事的に規律するための法律です。

    適法か違法かを取り締まるのではなく、正当か不当かを争う際の判断基準を規定しているものです。労働基準法は『労働者有利』と言われるのはその歴史的背景によるものです。この話はいつかまた

     

     

    特定雇用率:

    ※フィクションです※

     

    作中の「特定雇用率」はフィクションですが、国が定めるものに「法定雇用率」があります。

    これは従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があるというもので、障害者雇用促進法43条第1項 に定められています。令和5年度4月より民間企業の法定雇用率は2.7%(従業員37.5人に1人)となりましたが、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%(43.5人に1人)で据え置きされています。この経過措置は令和6年度には2.5%(40人に1人)、令和7年7月から予定通り2.7%となります。

    また、業種により定めれていた除外率(障害者の就労が一般的に難しいと認められる業種について、障害者の雇用義務を軽減することが目的で制定された制度で、例えば医療業は30%と決まっています)が10%ずつ引き下げられる予定です。

    企業は早々に計画的な障害特性を持った労働者の雇用対策が必要です。

     

     

    就業規則:

    言わずもがなの社内ルールです。

    就業規則と法律の関係性をご存知でしょうか。労働基準法第92条に(法令及び労働協約との関係)が定めれており、就業規則は法令又は当該事業場について適用される労働協約(労働組合とのルール)に反してはならないとあります。

    労使ともに守るべき順番は、法令→労働協約→就業規則→労働契約となります。

     

     

    不妊治療休暇:

    令和4年の統計で不妊治療を経験した人のうち16%(男女計(女性は23%))が、不妊治療と仕事を両立できずに離職していることがわかっています。厚労省はこれまでキャリアを積んできた女性社員が、不妊治療と仕事との両立に悩んで離職してしまうことは、企業にとって大きな損失であり、今後女性の管理職を育成し増加させる取り組みを進めるためにも、不妊治療と仕事との両立支援は企業にとって喫緊の課題であるとHPなどで謳っています。

    令和4年4月から次世代育成支援対策推進法施行規則を改正し、新たに「不妊治療と仕事との両立」に取り組む企業を認定する「くるみんプラス」等制度を新設しました。

    また、両立支援等助成金に「不妊治療両立支援コース」が新設されています。内容は不妊治療休暇などの両立支援制度をつくり、不妊治療をする労働者に制度を利用させた中小企業の事業主を支援する助成金となっております。

     

     

     

     

     

    ◆医療現場について◆

    mmは医療労務コンサルタントとして医療機関の労務管理のコンサルタントにも従事しています。

     

    令和年6年4月から、いよいよ医師の働き方改革の新制度が施行されます。この働き方改革の対象医師は病院診療所等に勤務する医師です。つまり、「労働者」を対象としています。開業医や産業医は対象外です。

    この仕事をしていると現場の勤務医から疑問を投げられます。

    「医者は労働者か?」

    ちろんです。

    労働基準法で定義されている「労働者」とは、『職業の種類を問わず、事業⼜は事務所(以下「事業」 という) に使⽤される者で、賃⾦を⽀払われる者』とされています。

    勤務医は労働基準法上での労働者ですと力説します。労基法上の労働者であるからには、同法で守られなくてはなりません。

     

    ただ、医師自身に労働者であるという認識は希薄です。年俸で雇用され、さらに医局人事(大学の医局の異動人事制度であり、大学に所属する医師が大学病院や関連病院間で異動を命じられます。多くの場合、大学所属の身分でありながら、異動先で雇用関係を結び勤務医の体裁とります)の場合は尚のことです。

    医師の働き方改革を進めるためには、まずこのことを話すことから始めます。しかも、院長など医師のトップと話をすることが重要です。

    医者は医者の言うことしかきかない」

    このことはmmがこの仕事を進めるための試金石となっています。

    また、「医者は労働者か」の次に出てくる疑問は医師の応召義務についてです。

    医師法第19条第1項に『診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない』とあります。この応召義務と労働者としての権利は相反するのではということを言われるのです。

    これに関して厚労省が通達(平成元年12月25日)「応召義務をはじめとした診療治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」で見解が示されています。

    その中に勤務医が医療機関の使用者から労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示を受けた場合に結果として、労基法違反になることを理由として診療等の労務を拒否したとしても医師法19条第1項の応召義務義務違反にはあたらないと明記されています。

    そうです、使用者はこの応召義務があるからといって、医師に際限のない労働を課してはならないのです。

    この話をもって、「そうか!」とすぐに医師を説得することは困難ですが、納得のお手伝いにはなると信じています。

    医師の高い使命感や倫理観を拝聴するたびにいつも頭が下がる思いです。法律やコンプライアンス重視ばかりを強く説明することのないように心がけて仕事に取り組むよう努めています。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    育児時短制度:

    育児短時間勤務制度のことです。育児短時間勤務とは、育児介護休業法第23条で定められています。3歳未満の子どもを養育している労働者が希望した場合、原則として1日の所定労働時間を6時間に短縮できる制度です。この原則6時間はあくまで原則です。通常の労働者の労働時間と比して短いことが要件だとmmは理解しています。

    また、法では取得期限を3歳未満としていますが、小学校卒業までなど法を超えた措置を講じている企業も増えました。

     

    そして、ノーワークノーペイの原則で、時短勤務中の賃金はその分に相当して、減額されることが一般的ですが、令和5年6月に政府が「異次元の少子化対策」の具体策として「こども未来戦略方針」を発表した中に賃金の減少を補う給付を行う制度「育児時短就業給付(仮)」を示しています。

    詳細やその実施時期については未定です。注視して参りましょう。

     

     

     

     

     

     

    キャリアの分断:

    仕事と育児(介護)の両立や女性の管理職登用が進まない要因のひとつに育児(介護)休業や育児(介護)時短勤務に伴うキャリアロスの問題が挙げられます。

    介護に関して、令和5年9月19日の読売新聞の第一面に『介護離職防止 企業に指針』と興味深い記事が掲載されました。

    今年度、会社員が親などの介護で離職するのを防ぐ手立てを、企業向けの指針(ガイドライン)としてまとめるとのことです。

    企業にはこれまで以上に様々措置を講じることが求められます。詳細は未定ですが、社会福祉士など外部の専門家と連携、介護事業者に提出する書類作成を代行するなど、一企業に求めるものとしては難易度が高い内容も盛り込まれています。

     

     

     

     

     

     

     

    クロス集計:

    本編2のES調査の回答データの集計方法のひとつです。

    クロス集計とは特定の条件設定を行い、条件ごとの傾向の違いを見る方法です。条件の例としては、「階層別」「男女別」「就業継続年数別」などがあります。クロス集計を行うことで、特定のグループの傾向を把握することができます。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    ◆mmひとりごとの中のひとりごと◆

     

     

    mmが社労士を目指したのは、すべての女性を応援するためと『about us』でお伝えしました。そして、「平時の今だからこそ」と。


    「平時の今」と書きましたが、コロナ禍では女性雇用の問題点がより鮮明に浮き彫りになったことを受けて、コロナ禍は「女性雇用の非常時」であったと訂正が必要ですね。

     

     

    この新型コロナ感染症のパンデミックではまさに雇用問題で女性たちに大きな影響を及ぼしました。

     

    総務省が毎月行う労働力調査では、令和2年7~9月期のプライムエイジ(25~54歳)と呼ばれるの働き盛り世代の就業者数を男女別にみると男性は前年比1.6%減、女性は2.8%減と男性と比較して大きく減少しているのがわかります。

     

    原因はコロナ禍で雇用が減少しやすいサービス業につく女性が多いという、産業構造要因と女性は雇用調整されやすい非正規で雇用される人が多いという就業構造要因、そしてさらに、外出制限での家事育児、または名前のない家事と言われる「家庭内無償労働の負担」が増加したことに加え、幼稚園や小学校が休園休校になり育児の負担が大きくなったことが考えられています。

     

    これらの問題からなる課題を解決するために、国は雇用調整助成金の拡充や小学校休業等支援助成金などの雇用維持策を講じ、雇用の悪化をくいとめる政策をとりました。また、業務のデジタル化などポストコロナでの働き方改革が一気に進みました。あらためて、働き方を考えざるを得なくなっています。日常生活社会生活も、社会に大きな変化が起こりもうもとには戻れず、新しい常識が定着している状況となりました。

     

     

    今後も、「平時」「非常時」にかかわらず女性の雇用問題の課題を解決に導くための社労士としての提案を以下に示します。

     

    国に対して:長時間労働の是正に始まる働き方改革の推進に社労士をはじめとした士業の知見をさらにさらに活かすこと。

     

     

    企業に対して:多様な働き方を可能にする雇用制度の提案・支援。

     

    女性労働者に対して:雇用の調整弁に簡単にならないための知識能力の研鑽、または異なる産業でも対応できる能力の習得。

     

    コロナ禍は正規非正規の労働市場の二重構造と性別役割分業の問題をむき出しにしました。これを好機ととらえ、長期的な女性の雇用の安定を実現したいと考えています。

     

     

    最後までご高覧いただき、ありがとうございました。

    労働諸法令や関連事項についてのご理解の一助になれば幸いです。

     

     

    つぎは年金のお話などいかがでしょうか。

     

     

    mmも経験を重ね、知識の研鑽に励みます。

     

     

     

    最後にもう一度、働く女子・働いていた女子・働こうとしている女子の皆さま、応援しています! 

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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  • 情熱

     

    ◆◆mmの注釈◆◆

     

    ◆令和5年9月現在◆

     

    退職

    日本国の最高法規である日本国憲法第18条に奴隷的拘束の禁止が、第22条には職業選択の自由が定めれられています。つまり、労働者は使用者に不当に拘束されることはなく、退職は労働者の自由の意思のもとに成立します。

    また、民法第627条第1項に期間の定めのない労働契約を結んだ場合の退職の自由の定めがあり、労働者が退職の意思表示をしたのち 2週間経過 すれば労働契約は終了します。

     

    退職の種類

    三種類あります。ひとつめは自己都合退職(一方的退職)。労働者による一方的な労働契約の解除です。ふたつめは予め定められていた事由による退職です。定年退職や契約期間満了、休職期間満了などです。そして、みっつめは合意退職です。労働者が契約の解除を使用者に申し出て、使用者がそれを承認することで成立、また、使用者が希望退職を募り、労働者がそれに応じた場合も成立します。

     

    退職届

    退職の意思表示の方法に法律の定めはありません。口頭でもメールでも、また会社の決まった様式でなくとも法律の上の違反とはなりません。

     

    休憩時間

    労働基準法第34条で定められています。使用者は労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を労働時間の途中に与え、自由に利用させなければなりません。休憩は全労働者に一斉に付与することが原則ですが、労使協定を締結する(業種によっては不要)ことで一斉付与は適用除外となります。

     

    退職代行サービス

    労働者本人の代わりに職場に退職の意思を伝える業者であり、利用する人が増加しています。

    法律上は、弁護士法第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止に違反する恐れがあります。報酬を得て業務として「法律事務」を行えるのは弁護士のみです。それ以外のものが法律事務を行うと違法です。退職は法律事務にあたります。

    その代行サービスが行う業務をしっかりと見極める能力も労働者には必要です。

     

    有休

    法律用語では「年次有給休暇」です。労働基準法第39条に定められています。平成31年4月から全企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、付与日数のうち年5日については、使用者が時期を指定して取得させることが義務化されました。パートなど契約期間に定めのある労働者も要件に該当すれば適用となります。違反をした事業所(企業)には罰則が科されます。令和3年7月、愛知県で初めて有給休暇の取得義務不履行として労働基準法違反で書類送検がされています。また、同法第6項には計画的付与の定めがあります。たとえば、有給休暇の付与日数が10日の労働者には5日、20日の労働者には15日までを計画的付与の対象とすることができます。(就業規則に規定し労使協定を締結する要件あり)。

    使用者が都合で取得日を決めるのかと違和感を覚える労働者もいるでしょうが、有給休暇の取得促進に有効だとされています。有給休暇のスムーズな取得は、労働者の心身の疲労の回復や生産性の向上につながり、使用者と労働者の双方にメリットがあるという考え方です。

     

    ES調査:

    Enployee(従業員) Satisfactionの頭文字です。

    企業は労働者のモチベーションを上げ、少ない労働時間(時間外残業をしない)で多くの成果を得る、すなわち生産性向上に 注力します。

    労働者が自社の業務、福利厚生、そして人間関係にどれだけ満足しているかを調査します。

    定期的に調査をすることで、労働者個人はもとより、部署や役職ごとのモチベーションや認識の相違など課題を可視化し問題を未然に防止するための解決策を打ち出す可能性を広げます。

     

    ◆労働者のモチベーションの話は別の機会でお話したいと考えています◆

     

    産業戦士:

    産業戦士の像は太平洋戦争の只中、昭和19年ごろに美術家などの手によって製作されました。国家が軍需工場をはじめとする各工場への労働力動員のため、「勤労」「産業戦士」といった考え方を体現することを国民的名誉とし、労働者は戦場で戦う兵士と同様であると位置づけ、戦意高揚を促しました。

     

    産休入り説明:

    令和4年4月1日から妊娠・出産の申出をした労働者に対し、個別に周知・意向確認の措置が企業規模を問わず義務となりました。出産育児に関する制度や法律の説明を適切な時期に適切な方法で行うこととされています。この適切な方法は①面談(オンライン可)②FAX③電子メール等 とされいて、要はツールは問わないということです。

     

    マタハラ:

    ※実際の法律説明※

    マタニティハラスメントの略。

    女性労働者が、妊娠・出産・育児に関し、妊娠・出産したことや休業などの制度を希望したことや、これらの制度を利用したことなどを理由に、上司や同僚などから嫌がらせを受け、就業環境を害されることをいいます。

    なお、法令や国の指針では、マタニティハラスメント、パタニティハラスメント(男性労働者が育児のために制度利用を希望または利用したことでうける嫌がらせ等で就業環境を害されること)、ケアハラスメント(働きながら介護をしている人が、上記「制度を~害されること」と同じ)の3つをまとめて、『職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント』と呼んでいます。

     

     

    ◆法令の条文、裁判の判決文などの、非常に長くまどろっこしい表現にとまどったことはありませんか? あれは、他の解釈を許さない唯一無二の絶対解釈を万人にさせるためだそうです。

    それを聞くとなるほどなとハラオチしますね◆

     

     

    改正育児介護休業法:

    ※実際の法律説明※

    令和 4年4月、10月、令和5年4月と三段階で施行されました。

    1、制度の個別周知・意向確認(令和4年4月)2、雇用環境整備義務(令和4年10月)3、育児休業取得率の公表(令和5年4月)

    1、は先述のとおり。

    2、雇用環境整備義務は新たに出生時育児休業(産後パパ育休)制度の創設と育児休業の分割取得の制度を整えることです。就業規則の改定など多くの企業が対応に追われました。

    3、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は育児休業の取得状況を年に1回、自社のHPや厚労省運営のWEBサイト『両立支援のひろば』等で公表が義務となりました。今後、労働者の規模要件は1,000人から逓減するでしょう。

     

     

    『男性の妊娠出産の促進等に関する法律』:

    ※フィクションです※

     

     

    同期入社:

    日本型人事システム「新卒一括採用」から「通年採用」に移行する企業がIT関連企業を中心に増えています。通年採用が当たり前になると『同期入社』という概念も無くなるかもしれません。

    人事制度の仕組みも日本型から欧米型への転換が進んでいるといわれています。

    日本企業は能力主義的人事制度であり、個々の労働者が持つ職務遂行能力を基準に人事を実施する「人に職務をつける」制度であり、欧米企業は職務主義的人事制度で、職務の価値を基準に人事を実施する「仕事に人をつける」制度です。前者を『メンバーシップ型』、後者を『ジョブ型』と呼びます。

    日本企業が『ジョブ型』に転換を図る理由はひとつではありませんが、もはやメンバーシップ型雇用が日本社会において機能しなくなったことが大きな原因だと思います。終身雇用や年功序列賃金といったシステムに対応するような、飛躍的経済成長が見込める環境にはないからです。そのため、新たな雇用システムとしてジョブ型雇用が注目されているのです。

     

     

    MBO:

    「目標管理制度(MBO)」とは、労働者自身に目標を設定させ、それに対する進捗や達成度合いで評価を決める制度で、Management By Objectivesの頭文字です。ドラッガーが提唱した組織マネジメントの概念です。目標管理は、「労働者のモチベーション向上」や「評価を下しやすくなる」など、労働者やマネジメント層などにメリットがある方法であるといわれています。個別に何を達成させるのかを明確にし、個人と組織のベクトルを合わせ、最終的に個人の目標と組織の目標をリンクさせることが目的です。    

     

     

    給与テーブル 

    給与テーブルとは、賃金や給与を決める基準になる表のことです。 一般労働者から幹部レベルまで等級に振り分け、その等級を基準にして給料を決める仕組みになっています。 等級をどのように決めるのかは会社の考え方が強く反映されます 。

    給与テーブルを労働者に開示するか否かを悩まれる経営者に出会うことがあります。

    そのときは即答で、開示を勧めます。給料テーブルに限らず、給料制度について公開されていると、自身の賃金がどのような基準で決定されているかを知ることで労働者に安心感を与えます。そして、給料制度と評価制度に一貫性があることが最も重要です。評価が給料に反映されること、評価が適切にされていることがわかると、労働者の満足度は高まります。その結果の帰趨はエンゲージメントを高め、生産性の向上や離職率によい影響を与えることとなります。

     

     

    懲戒:

    懲戒処分とは、 従業員が職場規律・企業秩序に違反したことに対する制裁として行われる不利益処分 です。就業規則に定めるなどの要件はありますが、懲戒処分の対象となる行為や処分に関しては、法律で具体的に内容が定められていません。では、企業側は就業規則に則ったならば、その裁量で懲戒処分を行えるのかというと、労働契約法第15条で使用者の懲戒権濫用の無効性が定められています。使用者が労働者を懲戒できる場合で、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない懲戒に関しては、権利濫用とみなし無効とするというものです。 

     

     

    ◆労働基準法と労働契約法、普段耳にするのは「労働基準法」ではないでしょうか。

    実は、就労する上で「労働契約法」はとても身近な法律なのです。

    違いを簡単に説明します。

    労働基準法は、労働条件の最低基準が規定されています。違反した場合には刑事罰が科せられます。そうです、労働基準法は罰則が規定されていて、国が使用者を取り締まるための法律となっているのです。

    一方、労働契約法は労働者と使用者の関係を民事的に規律するための法律です。

    適法か違法かを取り締まるのではなく、正当か不当かを争う際の判断基準を規定しているものです。労働基準法は『労働者有利』と言われるのはその歴史的背景によるものです。この話はいつかまた

     

     

    特定雇用率:

    ※フィクションです※

     

    作中の「特定雇用率」はフィクションですが、国が定めるものに「法定雇用率」があります。

    これは従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があるというもので、障害者雇用促進法43条第1項 に定められています。令和5年度4月より民間企業の法定雇用率は2.7%(従業員37.5人に1人)となりましたが、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%(43.5人に1人)で据え置きされています。この経過措置は令和6年度には2.5%(40人に1人)、令和7年7月から予定通り2.7%となります。

    また、業種により定めれていた除外率(障害者の就労が一般的に難しいと認められる業種について、障害者の雇用義務を軽減することが目的で制定された制度で、例えば医療業は30%と決まっています)が10%ずつ引き下げられる予定です。

    企業は早々に計画的な障害特性を持った労働者の雇用対策が必要です。

     

     

    就業規則:

    言わずもがなの社内ルールです。

    就業規則と法律の関係性をご存知でしょうか。労働基準法第92条に(法令及び労働協約との関係)が定めれており、就業規則は法令又は当該事業場について適用される労働協約(労働組合とのルール)に反してはならないとあります。

    労使ともに守るべき順番は、法令→労働協約→就業規則→労働契約となります。

     

     

    不妊治療休暇:

    令和4年の統計で不妊治療を経験した人のうち16%(男女計(女性は23%))が、不妊治療と仕事を両立できずに離職していることがわかっています。厚労省はこれまでキャリアを積んできた女性社員が、不妊治療と仕事との両立に悩んで離職してしまうことは、企業にとって大きな損失であり、今後女性の管理職を育成し増加させる取り組みを進めるためにも、不妊治療と仕事との両立支援は企業にとって喫緊の課題であるとHPなどで謳っています。

    令和4年4月から次世代育成支援対策推進法施行規則を改正し、新たに「不妊治療と仕事との両立」に取り組む企業を認定する「くるみんプラス」等制度を新設しました。

    また、両立支援等助成金に「不妊治療両立支援コース」が新設されています。内容は不妊治療休暇などの両立支援制度をつくり、不妊治療をする労働者に制度を利用させた中小企業の事業主を支援する助成金となっております。

     

     

    ◆医療現場について◆

    mmは医療労務コンサルタントとして医療機関の労務管理のコンサルタントにも従事しています。

     

    令和年6年4月から、いよいよ医師の働き方改革の新制度が施行されます。この働き方改革の対象医師は病院診療所等に勤務する医師です。つまり、「労働者」を対象としています。開業医や産業医は対象外です。

    この仕事をしていると現場の勤務医から疑問を投げられます。

    「医者は労働者か?」

    ちろんです。

    労働基準法で定義されている「労働者」とは、『職業の種類を問わず、事業⼜は事務所(以下「事業」 という) に使⽤される者で、賃⾦を⽀払われる者』とされています。

    勤務医は労働基準法上での労働者ですと力説します。労基法上の労働者であるからには、同法で守られなくてはなりません。

     

    ただ、医師自身に労働者であるという認識は希薄です。年俸で雇用され、さらに医局人事(大学の医局の異動人事制度であり、大学に所属する医師が大学病院や関連病院間で異動を命じられます。多くの場合、大学所属の身分でありながら、異動先で雇用関係を結び勤務医の体裁とります)の場合は尚のことです。

    医師の働き方改革を進めるためには、まずこのことを話すことから始めます。しかも、院長など医師のトップと話をすることが重要です。

    医者は医者の言うことしかきかない」

    このことはmmがこの仕事を進めるための試金石となっています。

    また、「医者は労働者か」の次に出てくる疑問は医師の応召義務についてです。

    医師法第19条第1項に『診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない』とあります。この応召義務と労働者としての権利は相反するのではということを言われるのです。

    これに関して厚労省が通達(平成元年12月25日)「応召義務をはじめとした診療治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」で見解が示されています。

    その中に勤務医が医療機関の使用者から労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示を受けた場合に結果として、労基法違反になることを理由として診療等の労務を拒否したとしても医師法19条第1項の応召義務義務違反にはあたらないと明記されています。

    そうです、使用者はこの応召義務があるからといって、医師に際限のない労働を課してはならないのです。
    この話をもって、「そうか!」とすぐに医師を説得することは困難ですが、納得のお手伝いにはなると信じています。

    医師の高い使命感や倫理観を拝聴するたびにいつも頭が下がる思いです。法律やコンプライアンス重視ばかりを強く説明することのないように心がけて仕事に取り組むよう努めています。

     

    育児時短制度:

    育児短時間勤務制度のことです。育児短時間勤務とは、育児介護休業法第23条で定められています。3歳未満の子どもを養育している労働者が希望した場合、原則として1日の所定労働時間を6時間に短縮できる制度です。この原則6時間はあくまで原則です。通常の労働者の労働時間と比して短いことが要件だとmmは理解しています。

    また、法では取得期限を3歳未満としていますが、小学校卒業までなど法を超えた措置を講じている企業も増えました。

     

    そして、ノーワークノーペイの原則で、時短勤務中の賃金はその分に相当して、減額されることが一般的ですが、令和5年6月に政府が「異次元の少子化対策」の具体策として「こども未来戦略方針」を発表した中に賃金の減少を補う給付を行う制度「育児時短就業給付(仮)」を示しています。

    詳細やその実施時期については未定です。注視して参りましょう。

     

     

    キャリアの分断:

    仕事と育児(介護)の両立や女性の管理職登用が進まない要因のひとつに育児(介護)休業や育児(介護)時短勤務に伴うキャリアロスの問題が挙げられます。

    介護に関して、令和5年9月19日の読売新聞の第一面に『介護離職防止 企業に指針』と興味深い記事が掲載されました。

    今年度、会社員が親などの介護で離職するのを防ぐ手立てを、企業向けの指針(ガイドライン)としてまとめるとのことです。

    企業にはこれまで以上に様々措置を講じることが求められます。詳細は未定ですが、社会福祉士など外部の専門家と連携、介護事業者に提出する書類作成を代行するなど、一企業に求めるものとしては難易度が高い内容も盛り込まれています。

     

     

    クロス集計:

    本編2のES調査の回答データの集計方法のひとつです。

    クロス集計とは特定の条件設定を行い、条件ごとの傾向の違いを見る方法です。条件の例としては、「階層別」「男女別」「就業継続年数別」などがあります。クロス集計を行うことで、特定のグループの傾向を把握することができます。

     

     

     

    ◆mmひとりごとの中のひとりごと◆

     

     

    mmが社労士を目指したのは、すべての女性を応援するためと『about us』でお伝えしました。そして、「平時の今だからこそ」と。

    「平時の今」と書きましたが、コロナ禍では女性雇用の問題点がより鮮明に浮き彫りになったことを受けて、コロナ禍は「女性雇用の非常時」であったと訂正が必要ですね。

     

     

    この新型コロナ感染症のパンデミックではまさに雇用問題で女性たちに大きな影響を及ぼしました。

     

    総務省が毎月行う労働力調査では、令和2年7~9月期のプライムエイジ(25~54歳)と呼ばれるの働き盛り世代の就業者数を男女別にみると男性は前年比1.6%減、女性は2.8%減と男性と比較して大きく減少しているのがわかります。

     

    原因はコロナ禍で雇用が減少しやすいサービス業につく女性が多いという、産業構造要因と女性は雇用調整されやすい非正規で雇用される人が多いという就業構造要因、そしてさらに、外出制限での家事育児、または名前のない家事と言われる「家庭内無償労働の負担」が増加したことに加え、幼稚園や小学校が休園休校になり育児の負担が大きくなったことが考えられています。

     

    これらの問題からなる課題を解決するために、国は雇用調整助成金の拡充や小学校休業等支援助成金などの雇用維持策を講じ、雇用の悪化をくいとめる政策をとりました。また、業務のデジタル化などポストコロナでの働き方改革が一気に進みました。あらためて、働き方を考えざるを得なくなっています。日常生活社会生活も、社会に大きな変化が起こりもうもとには戻れず、新しい常識が定着している状況となりました。

     

     

    今後も、「平時」「非常時」にかかわらず女性の雇用問題の課題を解決に導くための社労士としての提案を以下に示します。

     

    国に対して:長時間労働の是正に始まる働き方改革の推進に社労士をはじめとした士業の知見をさらにさらに活かすこと。

     

     

    企業に対して:多様な働き方を可能にする雇用制度の提案・支援。

     

    女性労働者に対して:雇用の調整弁に簡単にならないための知識能力の研鑽、または異なる産業でも対応できる能力の習得。

     

    コロナ禍は正規非正規の労働市場の二重構造と性別役割分業の問題をむき出しにしました。これを好機ととらえ、長期的な女性の雇用の安定を実現したいと考えています。

     

     

    最後までご高覧いただき、ありがとうございました。

    労働諸法令や関連事項についてのご理解の一助になれば幸いです。

     

     

    つぎは年金のお話などいかがでしょうか。

     

     

    mmも経験を重ね、知識の研鑽に励みます。

     

     

     

    最後にもう一度、働く女子・働いていた女子・働こうとしている女子の皆さま、応援しています!